仮想空間サービス比較 (アメーバピグ、ニコッとタウン、ぺたっとセルフィ) [2]


下記の記事は 2010/3 頃のもので,各サービスとも内容が大幅に拡充されているため,現在の内容とは食い違っています。あくまで、過去どうであったかという参考資料として、記事を残しておきます。



仮想空間内のコミュニケーション(グッピグ/すてき/ぐっせる)

ピグ、ニコッと、セルフィのいずれのサービスでも、自分以外のアバターをクリックすると、メールを送ったりするボタンとは別に、無料通貨をプレゼントできるボタンがある。プレゼントできる量には(1日毎に)上限があるのと、プレゼントしたからといって、自分の無料通貨が減るわけではない(単純に相手の通貨が増えるだけ)というところに特徴がある。そういう意味ではプレゼントではなく、単純な「付与」といったほうがいいかもしれない。

この「無料通貨付与」機能に相当するものとして、ピグは「グッピグ」、ニコッとは「すてき」、セルフィは「ぐっせる」というボタンがある。このボタンを押すと、相手の無料通貨が増える。自分も、誰かに押してもらえば通貨が増える。このため、タウンやエリアの中で「ボタンを押して欲しい」という旨の発言をしているアバターを見かける。基本的には、他人のボタンを押すことに対して自分のメリットはなく、基本的に 100% ボランティアである。

ピグの場合、グッピグされるとアバターがきらきら輝くため、グッピグされたことが自分にも他人にも分かる。また、誰が自分に「グッピグ」してくれたかがリストで表示されるので、グッピグされたらすぐに相手に押し返すということもできる。そのため、「押してくれたら押し返します」とプロフィールに書いていたり、そういう趣旨の発言をしているアバターもよく見かける。試しに、1時間ほど無差別に無言で「グッピグ」しまくってみたところ、返ってくる確率は 1/3 くらいだった。今のところ、返すことを強要するような文化はないように見える。サービスインして1年たったところでこの状態なので、おそらく今後もこの状態が続くのではないかと推測される。

http://www.royalcrab.net/Images/pig_guppig.png
グッピグボタンの表示のされかた。相手が今日どれだけグッピグされたかも表示されている。このウィンドウから相手のブログや部屋にも行ける。

一方でニコッとは、誰が自分に「すてき」をしてくれたかは分からない(「すてき」ボタンをプッシュするので、この行為のことを「ステプ」「ステップ」と言ったりするようだ)。また、仮に自分が誰かの「すてき」ボタンを押しても、その押された相手に音で通知があるだけで、自分と相手以外の他のユーザには「押された」ことが全く分からない。音を出していないと、相手にすら分からない。

これは、運営が「押し返しを強要するような文化が生まれると疲れるから」というポリシーに基づいて、あえて誰が押したか分からない、かつ押したことが周囲に全く分からないようにしているそうだ。運営しているスクエニが、FFXI で絆を強要しすぎて人間関係が泥沼化したりしたことを教訓にしているのだろうか、などと思ってしまうのは穿った見方かもしれないが・・・。なお、実際には「スッテプ」されたときにユーザが自ら「ありがとう」等と発言して、されたことに対するお礼を言うことも多い。

http://www.royalcrab.net/Images/nicotto_suteki2.png
ステキボタンの表示のされかた。相手の部屋に飛ぶことはできるが、ブログにはいけない。ステップされた数なども分からない。

セルフィの「ぐっせる」はそのまま通貨の名前でもあるので少々ややこしい。システムとしてはニコッとと同じで、ぐっせるされたことは通知があってわかるものの、誰にされたかは分からないようになっている。そのため、ニコッとと同様にユーザが自分でお礼をいうこともある。

いずれの仕組みがいいかは、ユーザそれぞれに好みがあるので、一概にどれがいいとは言えない。なお、私は誰がボタンを押してくれたか分かった方が嬉しい。また、たとえ分かったとしても、無理に押し返して欲しいとは思わない。また、先の無差別グッピグの結果からも、グッピグ返しはそれほど強要されている感じはないので、今のところピグのシステムが私には一番しっくり来る。

ちなみに、ピグでは前述のボタン押しに加えて、アバターの「家」を訪問する(「きたよ」ボタンを押す)と、そのアバターにさらに無料通貨がプレゼントされるという仕組みもある。こっちは、ユーザをクリックしてボタンを押す、というのに比べるとやや敷居が高い(というか、多少の時間と労力を要する)。「きたよ」してくれた人のリストは分かるので、来てくれた人のところに行くことができる。ちなみに、ぐっピグしてくれた人の家に無差別に訪問してみたところ、こちらの家に訪問しに来る人はだいたい 1/3 くらいだった。この 1/3 というのが、先の「グッピグ」返しの比率と同じくらいというところが興味深い。

この他、アバターをフレンドに登録するということが、いずれのシステムでもできる。登録すれば、相手に直接メッセージを送れたり、ログインしている状況を把握できたりするようになる。また、自分のプロフィールを公開する範囲を「フレンドまで」というように設定できたり、部屋に入れる人をフレンドに限ったりすることもできる。これらの仕組みは、システムごとに多少の差はあるものの、概ね同じことができる。

また、サークル(ピグでは部活)という、同じものに興味をもつ人たちのグループのようなものも作れる。これも、いずれのシステムでも同じようなことができるので、詳細は割愛する。

ブログとの連携

いずれのサービスも、ユーザが無料でブログを書けるスペースを用意していて、ブログを書いたりコメントを書いたりすることで、通貨がもらえるような仕組みが取り入れられている。このため、仮想世界サービスから始めたユーザであっても、ブログを書いてみようかという気を起こさせる。逆に、ブログ目的に始めた人であっても、ブログを書くことで仮想世界のアバターの所持金(通貨)が増えるのだったら、アバターを作ってみようという気にもさせる。このあたりについては後述するが、仮想空間サービスが「ブログサービスを補完するサービス」として作られていることを実感できる部分である。

ニコッととセルフィは、ブログに記事を書いたり、他人のブログにコメントを書いたりするだけでも仮想通貨がもらえる。これは毎日1回もらえるので、つい何かしら毎日書こうかという気にさせるものはある。ただし、ブログの内容がたとえ「あいうえお」とか意味のないものでも、内容に関わらず無料通貨がもらえてしまう。そのためかは断定はできないものの、数文字しか書いてないブログというのも結構みられる。この仕組はセルフィも同じである。ただし、セルフィのほうは MIXI と連動していて、MIXIアプリでぐっせるを貯めることもできるらしい(らしいというのは、私は MIXI を使ってないので試してないからわからない)。

一方アメーバブログでは、単純にブログを書いただけではピグの無料通貨はもらえない。「すんも」というブログ番付なる仕組みがあり、運営側から出される「お題」に沿った内容の記事を書くと、運営側が内容を評価してユーザの番付を決める。この番付が上がることで、有料通貨(無料通貨ではない)がもらえるという仕組みになっている。有料通貨というところがなかなか魅力的ではあるものの、評価するのが運営側なので、どのように評価されているのかは全く不透明ではある。実際、そうそう簡単には番付は上がらないようで、ユーザがブログに(2chとかにも)不満を綴っていたりもする。

しかし、何でもいいから文字を書けばいいという仕組みではないことから、ある程度内容のある記事をユーザは書くことになる。これは、運営の方針として記事の量を単純に増やすことよりも、記事数は少なくなったとしても、ある程度の内容の質を保つことを重視しているのだと推測される。番付に対する不満はあるものの、参加者は結構な数がいてそこそこの記事数が投稿されているところを見ると、現状の仕組みはある程度うまく回っているように見える。ただ、ユーザに対する飴があまりにも少ない(または稀にしかもらえない)状態が続くと、現状の仕組みだけでは回らなくなるかもしれない。

この他、着飾ったアバターのアイコンをブログに貼り付ける機能や、仮想空間内で撮影したスナップショットをブログに貼り込む機能もある。これらについては、次の記事で触れることにする。

(つづく)