ポップンミュージック(Pop'n Music)の練習法についての考察 (1)



ポップンミュージックは、

  • 降ってくるポップンの配置(パターン)を認識する
  • 認識したパターンを手で再生する

という作業を繰り返すゲームだと思っている。というか、ほかの音ゲーもこの部分は全く同じ。パターンや、再生する方法(手だったり足だったり)するのが違うだけ。ピアノとかの楽器で所見演奏をするときも、ものすごく大雑把にいえば、これと同じようなことをしている。

この観点からすれば、ポップンで難しい曲が叩けるようになるたにめに必要なことは、

  • あらゆるパターンを認識する能力を鍛える
  • 認識したパターンを再生できる、運指(運手)技術を習得する

という二点に集約できる。以下、具体的にどういうことかについて、私の個人的な考えを述べてみたい。ちなみにここでは、あくまで純粋な「たたく技術」の向上方法だけを考察対象としていて、「いかに練習のモチベーションを保つか」というモチベーション論については書いてない*1

要点

「パターンの認識」というのは、降ってくるポップ君をひとつひとつバラバラに認識するのではなく、いくつかのポップ君をひとつの塊として認識することをいう。この基礎になる「パターン」とは、仮に目を閉じていても手で叩くことができる、いわゆる「手がボタンの押し方を記憶している」状態になっているポップ君の配置のことをいう。具体例で示してみよう。

上の絵はカイゾクH(35)の48小節目の、いわゆる「(斜め)螺旋階段」とよばれる部分だ。この部分、テンポ 100 くらいで降ってくれば、全体をパターンとして見る必要はなく、ポップ君をひとつひとつバラバラに認識して、左右の手で交互に叩いていくことができると思う。しかしテンポ 160 となると、結構な速度でこれが降ってくる。これをバラバラのポップ君の連続として捉えようとすると、人によっては苦労するかもしれない。

一方で、こういう階段を「パターン」として記憶しておき、このパターンが降ってきたときには自動的に手がこのパターンを叩けるように訓練されていれば、このパターンを見しただけで楽々と叩けるだろう。これができるためには、まずは

  • この階段がきたとき、手が迷うことなく正しいボタンを順番に押せるようになっていること

が重要なポイントになる。その次に、

  • 降ってきたパターンが、自分の叩けるパターンのどれにあたるかを認識する

ことが重要なポイントになる。

さて、ここでもうひとつ例を挙げてみよう。

これは亜空間ジャズH(36)の49小節目にある螺旋階段の譜面で、階段の部分はカイゾクHと共通している部分がある。しかし、左側に黄色のポップ君を連打するパターンが追加されている点で大きく異なる。譜面を一見してわかることは、螺旋階段の部分を右手だけで叩かなければならない、ということだ*2。この部分を右手だけで螺旋階段が叩ける技術がなければ、いかに螺旋階段のパターン自体を記憶していても、叩くことはできない。一方で、右手で螺旋階段を叩けるようになっていれば、右側のパターンを右手に、黄色ボタンの連打のパターンを左手に、というパターンの分解と割り当てができるわけだ。

結局のところ、冒頭で書いた自分の叩けるパターンを増やし、その叩けるパターンに譜面を分解する(認識する)技術を磨くことが、上達の重要なポイントになる。

パターン化の必要性

人間は、一瞬で記憶できる物体の数に上限がある。数字なら、瞬時に覚えられるのは平均で7-8個程度*3といわれている。ずばぬけた能力をもった人でも、ランダムな数字を20個覚えることは不可能だ。ぎっしり詰まった譜面を叩くときにハイスピードにすると楽になるのは、画面に同時に表示されるポップ君の数が減り、本当に記憶する必要のあるポップ君の数を限定できるからだろう。しかし、ハイスピードをどんなにかけてもポップ君の数が 20 個とかなると、さすがにそれらを個別に全部覚えることができなくなってくる。この「瞬間記憶の限界」を突破する方法として、パターン化という手法が必要になる。

ポップ君をそれぞれバラバラの物体として認識しようとすると、個数が20個とかなると破綻してしまう。しかし、4個のぽっぷ君をひとつのまとまった「パターン」として覚えていれば、ポップ君が20個降ってきても、瞬時に覚えるのは 5 つのパターンでいいことになる。つまり、さまざまなポップ君の配置をパターンとして記憶しておけば、仮にぎっしり詰まった譜面がきてもそれらをきちんと記憶することができる。

上の例は FMポップEX(38) の 39 小節目だ。この1小節の中に、ポップ君が24個もある。ハイスピードで 4 倍にしても、ぽっぷ君が同時に 12 個は表示される。しかし、12個降ってきても、3つボタンの同時押しが叩ける人には、この譜面を記憶するのはさしたる問題にはならないと思う。なぜなら、同時に叩くべきポップ君3つを「パターン」として捉えることができるからだ。仮に画面に24個表示されていても、記憶すべきは高々 8 つ(ハイスピード4倍なら4つ)のパターンですむ。

このように、ポップ君の配置をパターンとして覚え、認識するということは、詰まった譜面を瞬時に記憶するためにも必須の技術と言えよう。

パターンを認識する技術の向上法

パターンの認識は「空間方向」と「時間方向」の二つがある。

  • 空間方向:譜面を横方向に分解して、左右の手にそれぞれパターンを割り当てる。
  • 時間方向:譜面を縦方向に見て、自分が覚えている(叩ける)パターンになるように分解する。

これら両方を瞬時に行なう必要があることを、まずは知っておく必要がある。その上で、さまざまな譜面を実際に目で見て、自分の手持ちの(叩ける)パターンにどのように分解できるかを考える訓練をするのがいいように思う。訓練法としては、個人的には以下のようなサイクルでやっている。

  1. いろいろな曲をプレイして、自分が認識できてない気がする曲をいくつかリストアップする。
  2. 譜面をとりよせ、どのようなパターンに分解できるかを机上で検討する。
  3. プレイ動画を見ながら、考えた通りにリアルタイムにパターン分解できているかを確認する。
  4. 分解できないようなら、分解パターンが悪い可能性があるので再検討するか、叩けるパターンそのものを増やす。

もうすこし具体的に、どういうパターンをどんな順で覚えていくといいのか、という部分については次以降の記事で書いてみたいと思う。

運手(運指)技術の向上

前述の通り、いかに目でパターンを認識できたとしても、それが手で叩けないのでは意味がない。逆に言えば、手が叩けるパターンが増えれば増えるほど、それだけパターンへの分解の自由度も高くなる。それによって、複雑な譜面への対応力を上げることができる。要するに、どれだけ多くのパターンを手で叩きこなせるかが重要だということ。

叩けるパターンの数を増やすシンプルな方法は以下の通り。

  1. まず、自分が叩けないパターンが何かを知る。
  2. そのパターンに対する手の動かし方(運手)を考える。
  3. 考えた運手パターンを手に刷り込む(手が覚えるまで繰り返し叩く)。

運手を考えるときに重要なことは、自分にとってできるだけ自然に叩ける動かし方になるようにすることだ。他人の叩き方を参考にする方法もいいんだけど、運手は手や指の大きさや体格などにかなり依存するところがかなりある。自分にあった叩き方を開発することが、上達への最も早い道筋だとおもう。

また、できるだけ汎用性のある運手にしておくことも重要なポイントになる。たとえば、階段を両手で叩く運手として覚えてしまうと、片手で階段を叩かないといけないパターンが来たときには対応できない。できるだけ、片手で叩けるところは片手で叩ききれるようにし、どうしても無理な場所だけ両手で叩くようにパターン化しておいたほうがいい。そうすると、さらに難しい曲を叩くときにも応用が効く。

パターンの具体例については、次以降の記事で書けたらいいな。




(参考) 譜面の落下速度と認識、運手速度の関係

現在のポップン(15以降)では、100 bpm の曲を HiSpeed 6 (実倍率 は 5 倍なので、実速度は 500bpm。くわしくはポップンミュージック上級曲&超上級曲難易度表: 資料館/HS早見表を参照のこと)にしたとき、ポップ君が画面の上端に現われて下端に到達するまでの時間は 0.6 秒のようだ。以下、100bpm HiSpeed 6 (実速度 500 bpm) を例にしてみよう。

人間は目が光を検知してから脳にそれが「見える」までに、0.3 秒ほどかかると言われている。ポップ君が 0.6 秒で下端まで達するということは、ポップ君が画面最上部に「見えた」と思った時には、現実ではすでに画面半ばまでポップ君が落ちてしまっていることになる。この速度で、ポップ君に対応するボタンを正確に叩くためには、ポップ君のパターンの「認識」と、パターンに対応するように手を(物理的に動かす)、という作業の両方を 0.3 秒以内に行なわなければならないということだ。

実際には、ポップンで 40 以上を叩ける人々の多くは、実倍速 600-650 付近 (200 bpm の曲で HiSpeed 3.5-4) でやっていることが多い。つまり、実プレーヤは 0.3 秒よりさらに短い時間で、これらの作業ができていることになる。実速度 600 の場合、落下時間は 0.5 秒であるので、認識と運手にかけられる時間は 0.2 秒程度しかないことになる。

*1:ゲームは楽しいからやるのであって、モチベーションが下がったら無理にあげずにまた自然に上がるまで待ったらいいのでは、と個人的に思うところもあったりするので、モチベーション論についてはここでは触れない。ただポップンは、ある程度頑張って練習する価値のあるゲームだとは思ってる。

*2:両手で叩くことも不可能ではないけど、相当な速度での左手の動きが要求される

*3:ワーキングメモリを参照のこと