ベートーヴェンピアノソナタ8番「悲愴」: Beethoven Piano Sonata no.8 (op.13) "Pathetique" (1−11小節)

運指というか、演奏が難しい場所を「ここむずかしいんじゃー」と愚痴をいう、ただの自己満足のコーナー。運指とか難易度について書いていることは、あくまで個人的な見解であって、一般論ではありません。この曲を難しいと言っている時点で、拙の腕が知れるというもの(やや自虐的)。この曲の客観的な技巧的難易度がどのくらいなのかが知りたければ,コルトーのピアノメトードとかでも見たほうがいいと思う.

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ちなみに楽譜はIMPLSから、1910年出版のものを使用。

なぜピアノソナタ8番?

曲については、素人の私よりWikipediaの説明をどうぞ。

これを弾く気になったのは、「月光」目的でホロヴィッツ先生のベートーヴェン三大ソナタCDを買った時に、このソナタの演奏が入ってて感銘を受けたというのがひとつ。バイト先に置いてあったグランドピアノで、どこかの外国人がこの曲をだーんと弾いてて感銘を受けたのがひとつ。楽譜を見てみたら、思ったより音符が詰まってなくて、意外に弾けるかも?と思ったのがひとつ。

ショパンの曲は音符がすごく詰まっててシャープやらフラットが並んでるから、それに比べると簡単そうに見えた。しかし、ベートーヴェンの曲ってショパンの曲とはまた違った難しさがあるのね・・・ってことが、弾きはじめてから分かった。

曲は序奏の繰り返しなしで、ゆっくり目にひくと10分以上、普通に弾いても9分くらいはかかる。提示部の繰り返しを省いて6分くらい。3,4回も弾くと結構体力を消耗する。1日平均1時間くらい練習して、人前で辛うじて弾けるレベルになるまで半年近くかかったと思う。それでも、部分的にどうしても納得いくように弾けなくて、ごまかして弾かないと無理なところがあった。

この曲に限らないけど、私は楽譜を見ながら演奏するスキルがないので、すべて暗譜して演奏してた。だから、楽譜をかなり忘れた今となっては、かなりの部分が弾けなくなってしまった。今は、譜面を見ながら弾くスキルを付ける訓練と並行して、この曲をどうやって演奏してたか思い出そうとしているところ。

そういえば、この曲の第二楽章はピアノ教室なんかでもよく教えられてるみたいで、弾いたことあるって人は多いけど、第一楽章を弾く人はあまり見たことがない。第三楽章弾く人は、もっと見たことない気がする(気のせい?)。通して弾く人は(以下略)。難易度的には第二楽章<第三楽章<第一楽章、だと思うんだけど。有名度では第二楽章≧第一楽章>第三楽章、くらいだから?

1〜11小節(序奏)

「だーん!」という印象的なイントロで始まる序奏。序奏だけでもかなり印象的なのに、主題がまた速いパッセージでとても印象に残る。弾いてみてると、音の重ね方が実にうまいなーと思う。しかし、このゆっくりした序奏ですら、難しいと感じる部分があるから悩ましい・・・

  • 5小節の和音を弾くのに、3-5 の間が開かない件(演奏納得率55%)

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5小節の前半にある和音。ここは、前半にある静かな旋律と対比するように、インパクトのある和音を打ち付けるところで、和音がしっかり弾けないとふにゃけて聞こえてしまう。この和音二つは、F,G-,A,F になっていて1235でしか物理的に弾けない。しかし、3-5 の指が開かないせいで、六度開いている A, F が押しにくく、5 で押す F の音量が足りなかったり、音の粒が揃わなかったりする。なにげに最初の F の音を ff で,かつ 4 か 5 の指で引かないといけない,というのも難しかったりする.

6小節最後にも同ような譜面はあるけど(下記)、

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こちらは B-,C+,E-,B- と5のが黒鍵を押すので、上の和音にくらべるとかなり押しやすい。こっちは 2 の指で押す C+ の音を揃えるのが少し難しい。また 6 小節の和音は、前の和音の連続として弾くのに対して、5小節の和音は F 単音からいきなり和音を弾くところも難しさを増幅してくれる。

  • 11小節、下り半音階階段の途中の和音がずれる件(演奏納得率70%)

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主題に入る直前にある、長い半音階の下り階段。そもそもこの下り階段自体が苦手なのに、この途中に入っている左の和音がなかなかの曲者。何気に正しい位置で和音を打たないと、「あれ、何か変」と思うくらい、ずれて聞こえてしまう。

そもそも、ブラインドタッチができないから、左手を見てないと和音を正しく打鍵できないってのが悪いんだけどね。でも、前の和音から手の位置が飛びすぎていて、さすがに体で覚えるのはしんどい。仕方ないから見ながら打鍵する日々なんだけど、見ながらやってるのにたまーに指の着弾に失敗してしまうと悲しい。

そして、最後にあるフェルマータの A- が、油断してると変な音になる。半音階に気をとられすぎるとしっかり音が出てくれないし、かといって気合入れすぎると強く弾きすぎて変な感じになる。主題につながる大事な部分なので、ここで変な音を出すとなかなかマヌケになってしまう。ここは慎重さが必要なところ。